第3章 陰抓楓乃、死にました
「……ごめんね。今日は親戚と会わなきゃだから行けない」
私が低い声でそう言うと、昴は困惑した表情で顔をあげた。
最初は困っていた様子で、でもすぐに苦し紛れに笑みを浮かべる昴に胸が痛くなる。
なんて返そうか迷っているのか再び沈黙が続いたあと、昴は口を開いた。
「……なら仕方ないな。また今度うちに来てよ」
わざと明るくしようとしているのか、少しだけ声が高い。
……それでも目は笑っていなくて、落胆の色が見える。
私も無理やり笑顔を作り返事をすると、気まずい雰囲気の中今度こそお別れをした。
ホームに向かう途中、私は上の空で考え事をしていた。
昴はどんな気持ちで誘ってくれたんだろう。
もう付き合って一年ぐらいだけど、あんな顔初めて見た。
きっと誘うだけでも緊張したに違いない。
私はもう一度心の中で謝った。
ごめん。ごめんね。
――――親戚に会うなんて、嘘なの。