第4章 地獄、落ちました
誰かが「おっ」と声を漏らした。
続けて上から声が降り注ぐ。
「あけといたぞ〜!」
聞こえたのは、ゆっくりと気の抜けた喋り方をする男の声だった。少し掠れていてちょっと落ち着く感じ。
……ていうか、あけといたって何。
何をあけたのか。そんな事を疑問に思いつつ、ふと先ほどの赤い点を見た。
……が。
さっきの小さな点はどこへ行ったのやら。
それはかなり膨張されて、私のすぐそばまできていた。
叫びたい気持ちを抑え逃げようとするも、それは凄まじい速さで私を追い込んだ。
どんどん近づいてくる赤いものと、それに比例して強くなる禍々しい気迫。
ほんとにこれ天国とは無縁だよね……!?
ついにはその赤は私の事を丸呑みしてしまい、辺りは赤一色となった。
動揺する私をよそに、楽しげな声でまた話が始まった。
「それじゃあ、魂は誰か持って行ってください」
「んじゃ、俺がもってく〜」
持ってく?なんて思った瞬間、私の体はひょいと持ち上げられた。
いや、持ち上げられたと言っても、あたりには誰の姿も見えないんだけど。
混乱する中、赤の光は更に強まり私を包み込んだ。
…………あれ、なんか眠い、かも…………
微睡む意識の中、私は誰かの声を聞いた。
「そんじゃ、行くぞ。
―――――地獄へ」