第3章 陰抓楓乃、死にました
「う………」
男がたじろいだ。
……無論、殺す気なんてさらさらないし、そもそも私が勝つなんて確証はないけど。こうでも言わなきゃ気後れしそうだ。
そして更に一歩詰め寄ると、男は小さくため息を吐いた。
「……分かった」
男は包丁をその場に落とすと、手を上げて「降参」のポーズをとった。
更にふてぶてしくその包丁を蹴り飛ばし、完璧に攻撃態勢から離脱した。
……どうやら、説得に成功したようだ。
私は本当に包丁が遠くへ行ったことを確認すると、こちらも木刀を納めた。
「……大丈夫ですか?」
私は後ろを振り向き、女の人を見る。
さっきはよく見えなかったけど、歳は二十代半ばぐらいだろうか。
「キャッ………!!」
次の瞬間、女の人が大きく目を見開いた。
私の顔におかしなものでも?と思いつつ、ふと後ろを振り向いた。