第3章 陰抓楓乃、死にました
その後電車に二十分程揺られ、私は家に向かってトコトコ歩いていた。
………昴に悪いことしちゃったなぁ。
自分がやった事に罪悪感を感じながら、私は月を仰いだ。
今夜は満月で一際輝いて見える。
私だって好きで断ったんじゃない。
断ったのには、ちゃんとした理由があった。
「消えてくれないのかな……」
人気のない夜の町並みで、私は左肩らへんを触った。
――私は生まれつき、肩甲骨のあたりに大火傷の跡がある。
火傷と言っても、蚊に食われたような軽いものではなく皮膚がただれたグロテスクなもの。
なんでこんなのがあるのかなんて見当もつかない。
ただ、昔友達に
“生まれつきある傷は、前世で思い入れのあるもの”
と教えられた。
まあ、幽霊とか占いとか全く信じない私はその話も信じなかったのだけど……
とにかくこんなの人には見せたくない。
特に……好きな人には。
不自然になりそうだから整形なんてしたくないし、その前にお金の事で親に迷惑を掛けたくない。
それに水着のレパートリーは減るけど、洋服や剣道着では隠れるから少しは我慢したい。
……でも、昴と一生そういうことをしなくてもいいのかと言うと、困った事にそれは嫌なのだ。
昴はこのくらい気にしないかもしれない。
でも、好きな人には少しでも綺麗な姿を見せたいんだ。
「あー……、もうやだ!」
悶々とした考えを吹き飛ばすように、私はブランと真上を向き天に向かって叫んだ。
その時だった。