第3章 伯爵家の令嬢×兄の友人
「――――すごい体験をしてしまった」
カっと目を見開いたシェリーは魔法書を片手にベッドに寝転がっていた。
窓の外は暗くなり、時計を確認すると一時間程経っていた。
まだ胸がドキドキしている。
他人の体験談、もしくは妄想を体験できると例の女は言っていたが、それにしてもリアルすぎた。
まるで、ハウロという男性に本当に抱いて貰ったのではないかと勘違いしてしまう程だ。
起き上がると、見なくてもわかる。
すっかり濡れてしまっていることに……。
「それにしても…リアルすぎるでしょ」
改めて本を見る。
『夢か現実か』そのタイトル通りだった。
恐る恐る表紙をめくると
「あれ…?」
滲んで読めなかったはずの目次が、ひとつ、はっきりと読み取れるようになっていた。
『伯爵家の令嬢×兄の友人』
ごくり、と唾を飲む。
ひょっとして、体験するごとに新しい目次が公開されていくのだろうか。
ずるい。
これでは何があるか気になるではないか。
コンコン――
ドアがノックされ、シェリーは驚く。
「は、はい!」
「シェリー様、お食事のご用意が整いました」
「わ、わかったわ。すぐに行く」
侍女の声にシェリーは頭を振る。
そうだ、私はパン屋の娘ではない。
男爵家の三女だ。しっかりしないと。
シェリーは魔法書を引き出しにしまうと部屋を後にした。