第8章 私のストーリー
「お、遅くなりました。おはようございます。お父様、お母様、お兄様」
食堂に着くと朝の挨拶をする。
少しぎこちなくなってしまったが、最近のシェリーは様子がおかしいと言われていたのである意味いつも通りだろう。
そしていつも通り心配してくれる三人の姿があった。
益々申し訳なくなる。
「大丈夫です。申し訳ありません」
「そう? それじゃぁ食事にしよう」
今朝は白身魚の香草焼きだ。
シェリーの好きなメニューでもある。
焼きたてのパンやスクランブルエッグもあり、食べることが大好きなシェリーは徐々に自分を取り戻して――いるつもりだった。
ふと視線を感じ、顔をあげるとシルフォードと視線がぶつかる。
ドキっとしてしまったが、なんとか冷静を装うと、シルフォードはにっこり微笑んで食事を再開した。
……偶然よね?
優しい兄がシェリーに微笑むのはいつもの事だ。
それなのに何故か今日は特別な意味が込められているような気がした。
その日の午後もシェリーは廊下でシルフォードにつかまり、一緒に図書室で過ごすこととなる。
至って普通な様子に、シェリーだけはドキドキしていた。
シルフォードがシェリーの名を囁くたび、大きな手がシェリーの髪を撫でるたび、心臓がうるさい程に騒ぐのだ。
実の兄にこんな感情を抱くなんておかしいだろう。
「お兄様、少し眠くなってしまいました」
「なら今日も俺の肩を使うといい。ゆっくりおやすみ」
ドキドキしすぎて疲れたころ、寝不足のせいもあって眠気がおそう。最近の午後はいつも眠い。
優しいシルフォードの肩を借り、シェリーはゆっくりと夢を見たのだった――