第5章 抱きしめる意味
温かく大きな温もりが私を包んだ。
ひっくひっくとしゃくり上げるようにして泣き出す私の背中を、夏油先輩の大きな腕が包み込みそして優しくなだめてくれる。
私は一瞬の戸惑いを見せたものの、直ぐにその温もりの心地良さと安心感にいつの間にか力は抜けていて…夏油先輩の胸元の学ランをぎゅっと強く握りしめた。
ポタポタと溢れ出す涙は止まる事を知らず、頬を伝いそして床へと落ちていく。その間も、夏油先輩はゆっくり背中をポンポンと撫でてくれていて、私はそれに安心しきったようにして涙を流し続けた。
「誰か来るな」そんな声が頭上から聞こえて来たのは、私が泣き続けて10分ほどしたころだと思う。
夏油先輩はそれまでずっと私を優しく宥めてくれていて、だけれどその声に顔をゆっくりと持ち上げれば、夏油先輩は「ごめんね、少し失礼するよ」と言ってヒョイっと私の身体を持ち上げた。
持ち上げると言うよりは、抱き抱えられたと言った方が正しいか。つまりはお姫様抱っこをされているということ。
私はそんな突然の夏油先輩の動きに目を白黒させ驚いていると、先輩は廊下の窓を開けヒラリとそこから飛び降りた。
「え…ここ二階…」