第29章 本当は
「こんなの二年だけでどうにか出来る任務じゃない…ッ!!」
七ちゃんが呪霊を強く睨み付けながら大きな舌打ちを落とす。膝は擦りむき血がポタポタと垂れていく感覚がする。右手に持った呪具は無事だ。ハァハァと上がる息を整えながら呪霊と一定の距離を保つ。
目の前には黒い獅子の形をした大型呪霊。
間違いなく、二級の私達が手に負える相手なんかじゃない。
「とにかく、今はこの場から無事離脱することを考えましょう」
七ちゃんの言葉に、私と雄ちゃんが無言のままこくりと頷いた。決して目の前の呪霊からは目を離さずに、今はこの場から逃げることだけを考えなければならない。
強く呪具を握りしめ、一歩足を踏み出そうとした時だった。目の前の呪霊が紫色の切れ長な瞳を大きく見開いた。瞬間、ギロリとその視線は一点へと向けられる。
まるでスローモーションでも見ているかのようだった。雄ちゃんへ目掛けて走っていく呪霊を目にした瞬間、無意識のうちに手を伸ばしていた。
「……ッ雄ちゃん!!!」