第28章 染まりゆく
部屋に帰ってから、自分が今まで何をしていたのか記憶がない。むしろどうやって部屋に帰って来たのかすら曖昧で、胸の奥がぎゅっと握り締められたみたいに痛むことだけは嫌と言うほどに感じた。
朝、目を覚ましていつもと同じように制服へと腕を通す。
浮かんでくるのは二つのこと。
五条先輩の顔と昨日の言葉、そして傑先輩だった。
このことを傑先輩に言うべきなのか言わないべきなのか、それすら分からない。言っていいこととも思えないが、隠しておくにはあまりに大きな出来事で。
「…傑先輩に会いたい」
ぐちゃぐちゃとした頭の中でまず思ったのは、ただひたすらにそれだけだった。
今までずっと悩んできた。どうしたら五条先輩の一番になれるのかと…けれどそれは私にとっては叶わない願いで、一生起きることのない出来事だとそう思っていた
自分の決めた決断も、五条先輩が告げた終わりの言葉も…何もかもがこれて良かったのだと、確かに数ヶ月前の私は信じて疑わなかったのに。
それなのに何で…今さらこんなこと…
そして何よりも嫌悪を抱いたのは、今頭を悩ませている自分自身にだった。
だって私は…傑先輩の恋人なのに。
一体何を迷っているというのだろうか。