第27章 初めての
傑先輩と喧嘩をしてから数日経った。いや、喧嘩というよりかは私が一方的に怒ってしまったと言った方が正しいだろうか。
「はぁ…」
「エナちゃん元気ないね、どうしたの?」
雄ちゃんが私の机の前へとやって来て、頬杖を突きながら心配そうにこちらを見つめる。
「以前自分で言っていたじゃないですか」
文庫本読んでいた七ちゃんがパタンと本を閉じ、こちらへと視線を寄越した。
「何が?」
「ため息を吐くと幸せが逃げるって」
「…言ってたね」
確かに言っていた。割とよく溜息を吐き出す七ちゃんに、幸せ逃げちゃうから溜息禁止〜なんて笑いながら言っていた。
けれど今は…
「自分の不甲斐なさに溜息が止まらなくて」
どこか少し考えるそぶりをした雄ちゃんは首を傾げながら私を見つめキョトンとしている。
「もしかして夏油さんと喧嘩でもした?」
「…………」
「図星ですね」