第25章 納得
「傑、お前が言ってたこと正しかった」
教室に入ってきて直ぐに、夏油へそう声をかける五条。夏油の視線は携帯に向いたままカコカコと小さな音を響かせながらいじっている。
「あぁ、昨日のドラマの話?やっぱりあの変態女が犯人だったね」
「ちっげーよ!!」
「え、じゃあ何?悟が正しいなんて言葉使うことに驚きなんだけど」
夏油は携帯に向けていた視線を持ち上げ、ゲンナリとした表情で五条を見つめた。
けれどもそれはほんの一瞬で、夏油は何かに気がつくと持っていた携帯を机へと置き夏油の目の前に立っている五条と視線を合わせるようゆっくりと立ち上がる。
「それで?私が正しかったからどうするの?」
碧くキラキラとした瞳が夏油を捕らえる。その表情は真剣そのものだ。
乾いた空気が教室内を包み込み、もう一人の同級生硝子は素知らぬ顔で窓の外を見つめている。
「奪う」
「…………」
「とは、ならねぇ」
「は?」
「いくら俺がクズでも、親友の女に手を出すほど人間終わっちゃいねぇの」
夏油はその切長な瞳を大きく見開きグッと眉間にシワを寄せた。五条ならば奪いに来ると宣戦布告をして来るはずだと、そう思っていたからだ。