第25章 納得
そして何よりも、いくら五条が自分の気持ちに気づくよう夏油が手助けをしたと言っても、五条の変化に微かでも気が付いていてなおあの子へと想いを告げた自分に、夏油は少なからず嫌悪感を抱き小さな鉛のようなものが心の底に小さく残っていたからだ。
真面目な夏油。だからこそ酷く悩んできた。
五条があの子を特別に思っていた事には何処かで薄々気が付いていたはずだ。それでも大切にしない五条を見て、傷付きボロボロになっていくあの子を見て、夏油は自分の手で幸せにしてあげたいとそう思った。けれど、本当にそれだけだろうか。自分の手で五条とあの子をくっ付けることが出来たのではと思ってしまう。
あの子のことを想うのならば…
でも、夏油には出来なかった。だからこそ。胸の中がモヤのようなもので囲われている感覚がしてしまう。
ずっと焦がれていた。大切で愛しくて特別だった。
だから、あの子の涙は見たくなんてなかった。
いつだって笑っていてほしい。
今さら引くつもりはない。
「君がそう言うのなら、私はもう何も言わないよ」
「…………」
「だけどね、悟。人の心はそう簡単に思い通りにはいかないものなんだよ。本気の気持ちならばなおさらに」
夏油自身がそうであったように。
きっと五条にとっても簡単なことではないはずだ。