第25章 納得
「好きなの選びべ」
「え?」
「そのブッ壊れた呪具の代わり。好きなもん選んで良いよ」
五条先輩のその言葉に思わず立ち尽くす。え、だって…え!?
「本気で言ってる!?」
「本気で言ってる」
「呪具貰って良いの!?」
「良いよ、蔵にあっても意味ねぇし。だったら使った方が良いだろ」
「ま、まじですか…」
五条先輩からの思わぬ申し出に内心浮かれずにはいられない。あの呪具はもう何年も使ってきた私の相棒だ。けれどもうあれを直して使うことは不可能だろう。
「これとか良いんじゃね?前のやつと型も重量もほぼ変わんねぇ」
五条先輩は一つの呪具を手に取ると、それをクルクルと振り回してみせる。そして「それに」そう言葉を漏らすとニヤリと笑い少し遠く離れた所にあった鉄製のオノ目掛けそれを勢い良くぶん投げた。
スパンっそんな切れ味抜群な音が響いたかと思うと、私はその場を見て思わず目を大きく丸める。
「そこそこの呪具相手でも簡単に切れる」
「まぁ上手いこと呪力を込めればの話しだけど」とそう続けた先輩の視線の先には、オノを通り越し壁に突き刺さる鎌形の呪具。オノを貫通したのだ。それなのにも関わらず簡単に鉄を切り裂いたその先の木壁には呪具が綺麗に突き刺さっている。つまり…
「呪力の込め方天才なの?」
手前の鉄を切り裂き、その後ろの木は切り裂かないよう五条先輩が緻密な呪力調整をして投げたということ。