第25章 納得
「疲れてるのに無理しないで」と言えば「私が会いたいんだ」と、こちらの顔が赤くなるような言葉をくれる。
うん、本当にこの人は…そんなことを思いなが心の柔い部分が満たされていく。
だから、五条先輩のことをあれ以上考えず済んだのかもしれない。今思えば、傑先輩にはそれすら全てお見通しで…私へと会いに来てくれていたんじゃないかとすら思えた。
もしもあの日起きたことを、五条先輩が話に出したらどうしようかと内心ドキドキしていたが、そんなことが起きる事もなく先輩は私の隣のベンチに座って携帯をいじっている。
「腹減った」
「あ、チョコあるよ。食べる?」
「うん」
鉛玉を入れているポーチのポケットに二つだけ入れていたチョコを取り出し五条先輩へと手渡せば、五条先輩はそれを受け取ると一つを自分の口へと放り込み、そしてもう一つを私の口元へと押し付けた。
「んっ!?」
「あーん」
思わず反射で言われたまま口を大きく開ければ、そこへチョコがポイっと入ってくる。
どうしてこの人は…こんなことを平然と出来てしまうんだ…
私の隣に座っていたお姉さんと、五条先輩の隣に座っていたサラリーマン、それ以外にも歩く人々の視線がとんでもなく突き刺さっていることに気が付く。
ただでさえこの人といれば目立つというのに、今目の前を通ってお姉さん二人組は「きゃーイケメンにあんなことされるなんて羨ましい」そんな声が聞こえてくる始末だ。