第24章 告げる
けれど、五条先輩はそんなことお構い無しでそのまま手を引くと部屋の中へと足を踏み入れた。
ベッドへと座り、当然のようにこちらを見上げる。「ん」と言って軽く顎を突き出すのを見るに、多分…手当てしてってことらしい。
今さら部屋を出るのもおかしいだろう。そもそも慌てて出た時点で、まるで意識しているみたいなその行動自体やるべきではない気がする。
「口の横、結構深く切れてるね」
私は持っていた袋をベッドへと置くと、そこから消毒液とガーゼを取り出し五条先輩の口の横にある傷口へとトントンと押し当てた。
傑先輩と五条先輩の二人が喧嘩をすることはよくあるが、こうやって傷を作る姿を見たのは初めてだ。私と傑先輩が付き合うことになったから殴り合いの喧嘩をしたのだろうか。でも何で…いくら考えてもそれが原因で二人が殴り合う理由が分からない。口喧嘩ならまだしも…
きっと聞いても、傑先輩も五条先輩も教えてはくれないだろう。だから聞けない…だけど二人の関係が少しでも乱れるのは嫌だ。そう思うのは私の我儘だろうか。今の私の立場で、そんなこと言えはしないのは分かっているが。
「染みる」
「もう終わるよ」