第24章 告げる
少し二人で何気ない話をした後、渋々任務へと向かっていく傑先輩を見送る。その表情には、先ほどの不安気な色はなくて、ホッと安心した気持ちになった。
あの人を不安にさせたくはない…そう思うから。
だけれどそんな気持ちの私とは裏腹に、ガラガラと開かれた医務室のドアの前には夜我先生が立っていて。
「柊木か、どうしたこんな所で」
「あ、先生。夏油先輩が怪我したので手当てしてました」
そう答えた私に、先生は何か考えるような素振りを見せたあと「そういうことか。なら悟の手当てもお願いして良いか?」とそんなことを言ってくる。
「え?」
「いや、さっき悟と会ったんだがアイツも怪我をしてたようだったからな。でもそうか、傑と殴り合いの喧嘩をしたのか。全く、アイツらはいつになったら落ち着くんだ」
どうやら夜蛾先生は怪我をしていた五条先輩の為に消毒液やらを取りに来たようだ。見かけによらず相変わらず優しい。
「頼めるか、柊木」
正直本当は今、五条先輩と二人きりになるのは避けたい。傑先輩の不安気な顔がチラつく。
けれど、傑先輩がそれを望んでいないことも分かっている。だって嫉妬はするし不安にはなると言っていたけれど、私達の特訓を許した人だ。私が五条先輩を避けることを望んではいないだろう。
それが傑先輩らしいと思う。それと同時に、もっと自分の気持ちを言ってくれても良いのにとも思う。
でも、多分、傑先輩は…怪我をしている五条先輩を放っておくなんてそんなこと望んでなどいないだろうから。手当てしてあげてってきっと言う。そういう人だ。だから私は…傑先輩を大切にしたいと思う。そんな人だから、大事にしたいって思う。