第24章 告げる
「はぁぁ、任務行きたくない」
私を抱きしめたまま、こちらの肩へトンっと頭を乗せる傑先輩。
火照る頬、少しばかり乱れていた呼吸を整え先輩の背中に回していた腕の力を再び入れ直す。
「え、今から任務なの…?」
「うん、現場が中学校でね。下校後に行かなくてはいけないから夜からなんだ」
時刻はもう夕方だ。呪霊の出没条件やら、今回の先輩みたいに仕方なしに夜から任務ということも少なくはない。
「そっか…」
「離れたくないな」
私を包み込む力が少しばかり強くなって、鼻を傑先輩の香りがかすめる。私はこの匂いが好きだ。とても安心する。
五条先輩とのことで、ぐらぐらと揺れていた心が嘘みたいに安心して落ち着いた気持ちになる。不思議だ、傑先輩にはきっと相手を安心させる何か特殊な物でも出ているのかとすら思うほど。
「私も…離れたくないよ」
小さくポツリと呟けば、傑先輩は私を見下ろしていた瞳をギュッとつぶって「はあぁぁぁー」とさらに大きな溜息を落とした。
「本当にもう…これ以上好きにさせないでくれ」
困ったように言葉を溢すその表情に、思わず胸の奥がギュッとする。
トクトクと聞こえてくる心音が、優しく包み込むような温もりが、気持ちが良い。きっと私をこんなにも安らかな気持ちにさせてくれるのは…傑先輩の腕の中だけなのだとそう思った。