第24章 告げる
「抱きしめても良い?」
少しばかり掠れた傑先輩の声。
それが何だが少し気がかりで、こちらを見上げる傑先輩をぎゅっと優しく包み込む。
「…どうしたの?」
力無く私の身体に回っていた傑先輩の腕にギュッと力がこもる。こんな傑先輩は珍しくて、思わず困惑してしまう。どうしたんだろう…
だけれどそう考えてすぐに、先ほどあった五条先輩とのことを思い出して傑先輩を抱きしめる力を強めた。
どうしたのじゃないよ。傑先輩はきっと不安なんだ。それなのにそれを口にするのを我慢している。多分それを言ったら私が困ってしまうと思っているのかもしれない。こんなことで困りはしないのに。先輩の気持ちを知りたいと、そう思うのに。
「傑先輩、私は傑先輩の彼女だよ」
「…うん」
「だから心配しないで」
「うん」
傑先輩の心音が、トクトクと私の身体へと伝わってくる。椅子に座っている傑先輩の頭を包み込むようにして抱きしめれば、少しは不安じゃなくなるだろうか。
「…私は、ずるい人間だ」
「え?」
「…それでも許してくれるかい。嫌いにならないで…いてくれるかい」
傑先輩の言っていることは良く分からないけれど、私は傑先輩がずるい人間だとは思えなかった。もしも本当にそうだとしたら、それにはきっと意味があるはずだから。傑先輩がずるくならなくてはいけなかった理由が。
だから私は…
「傑先輩を信じてるから、ずるくても何でも…私は先輩を許すよ。嫌いになんてなるわけないよ」