第24章 告げる
苦笑いする傑先輩の手を取り引きずるようにして校舎内の廊下を歩く。
「本当に平気だよ」
「だめだよ、後で悪化したら困るでしょ」
「意外と心配症なんだね、自分のことには結構疎いのに」
優しくそう言った傑は、私の腕にある擦り傷にそっと触れた。多分さっきの特訓中に出来たのだろう。肘あたりが赤く染まっている。
「…これくらい平気」
「私の前に、その腕を手当てしようか」
「傑先輩が先!どうみてもそっちの方が重症だよ」
立ち止まり傑先輩を強めに見上げれば、先輩は何故か小さく「ふっ」と笑う。
「どうして笑ったの?」
「嬉しくて」
「…嬉しい?」
「君が心配してくれるのが私は嬉しいんだ」
「心配するのなんて当然でしょ、傑先輩は…私の彼氏なんだから」
緊張しながらもそう言葉を落とせば、頬を緩ませたその表情は本当に嬉しそうで、思わず私もふっと小さく声を出して笑った。
「私、少し怒ってたのに」
緊張の糸が溶けていくみたいに和らぐ。
「ふふ、ごめんね」
私は傑先輩の手を引いてまた歩き出した。ギシギシと床の軋む音を響かせながら。
心配一つでこんなにも嬉しそうな顔をしてくれる傑先輩に。全くどうしようもないなと思いながらも、そんな姿を見たらこれ以上怒れなくなってしまう。