第23章 はじめての
まるで心の何処か奥底からぐわっと何かが溢れ出すみたいに出た言葉。
そんな私の言葉に、傑先輩はパチパチと瞬きをしている。多分…私がこんなことを言うとは思わなかったのだろう。
その傑先輩の顔を見て、思わず恥ずかしくなって服の袖で顔を隠そうとすれば、こちらを驚いたように見つめていた傑先輩は、片手で口元を抑えると、私よりもずっと顔を赤らめその瞳に熱を持たせた。
「本当に君は…」
周りには沢山の人達がいて賑わっているはずなのに、今は傑先輩の声しか私の耳には届かない。
「困ったな、離れたく無くなる」
頬が薄らと赤い。口元から手を離した傑先輩は、そのまま私を見下ろすと「…はぁ、好きすぎる」とそんな甘えたような声と共に、とろけてしまうほどに甘い笑顔を向け私をぎゅっと抱きしめた。
私も傑先輩の背中へギュッと腕を回す。周りに人がいるだとか、そんなことは心底どうでもよくて…今はただ、目の前のこの人の体温を感じていたい。