第23章 はじめての
美しくキラキラと煌めく夜景を見下ろす。いつもならば、傑先輩の呪霊に乗って空中散歩するところだが、今日は違う。
デートスポットとして有名な夜景の見えるビルの上だ。
ふわりと夜の澄んだ空気が頬に触れて、隣にいる傑先輩の横顔を見つめた。美しい横顔が夜景とマッチしてとても絵になる。
そのまま真っ直ぐに夜の街を見つめていれば、隣でこちらを見下ろして来る傑先輩の瞳が私に向いていることに気が付いた。
「今日は楽しかったね」
「うん、凄く楽しかった」
目尻を下げこちらを見つめる傑先輩へと笑顔を向ければ、傑先輩がするりと私の手を握る。指と指が絡まり合う、恋人繋ぎだ。
私はそんな突然のことにドキドキとしながらも、それが傑先輩にバレないようにと必死で平静を装う。傑先輩の長くてゴツゴツとした指先、だけれど優しく包み込むみたいなその握りしめ方に、やっぱり傑先輩の優しさを感じる。
今まで抱きしめ合って寝たことも、手を引かれ歩いたこともあったはずなのに、何故か今はやけに心臓がうるさい。
「次、休みが一緒になるのはいつだろうね。最近君達も忙しいだろう?遠出の任務も多いようだし」
「うん、一気に任務量増えた気がする。先輩達に比べたらまだ全然だけど。なかなか休みが被らなくても、夜ご飯くらいなら一緒に行けるかな」
「そうだね、本当はもっと一緒にいたいけれど、しばらくは我慢かな」
傑先輩のストレートな言葉が胸の奥まで真っ直ぐに落ちて来る。どこかポカポカとした気持ちを感じながら、今見えている目の前の時間を大切だと思う。
「私も…だよ」
「…え?」
「私も、もっと傑先輩と一緒にいたいって、思う…よ」