第23章 はじめての
最近ではキリキリとなっていた馬鹿みたいな胸の痛みはもうない。
その代わりに…少しばかり穏やかで、優しい自分でいられている気がする。これまで自分を傷付けてきた分、少しくらい自分に優しくしても良いんじゃないかと思う。あの無茶な恋を、終わらせようと努力する自分を労り慰めるくらい許されるだろう。
五条先輩のことを思えば、まだ胸の奥底から何か溢れてくるモノがあるけれど、でも今はそれから目を背けるべきなのだ。ここでまた彼に近づいてしまえば、きっとこの決心や考えなどいとも簡単にグラグラと揺れて崩れるに違いない。
傑先輩の手を取った。
私は傑先輩と歩んでいくことを決めた。
それは間違いなく私の意思であり、そして私の本心だ。
この目の前で嬉しそうに笑顔を見せてくれる傑先輩の隣で、私もずっと笑顔でいられたのなら、きっとそれはどこまでも幸せな事なのだとそう思うから。