第22章 分からない
「デートしようか」
しばらく抱きしめ合っていた私達だけれど、こんな所で二人抱きしめ合っているのはマズイと傑先輩の虹龍へと乗り高専から少し離れた上空で夜空を見上げていた時だった。傑先輩からの突然の提案にキョトンと首を傾げる。
虹龍は名前の通り七色に彩られた龍だ。傑先輩の持つ呪霊の中で最高の硬度を誇っている。
「デート?」
「うん。お互い忙しくて付き合ってからもほとんど会えていなかったし、次の休日は一緒に過ごしたいなと思うんだけれど、どうかな?」
今まで皆んなで休日に遊びに行くことはあっても、傑先輩と二人きりで出かけたことはもちろんない。行っていたとしても任務の後に軽く食事を食べに行ったくらいだ。それはデートとは言えないだろう。
「うん、行きたい!」
私を背後から抱きしめ座っている傑先輩の方へ顔だけ振り向かせれば、嬉しそうに笑みを作る傑先輩。
「何処か行きたいところはある?」
「うーん、思いつかないかも」
そもそもデートなどしたことがないんだ。皆んながどんな所で普段デートをしているのかも、ましてや自分がいつかデートをするだろう時を想像したことすらない。
五条先輩とは時々映画に行ったりしていたけれど、あれは先輩が観たい映画があって一人で行くのもなんだからと誘われていただけで…デートでは決してないだろう。