第22章 分からない
「謝る必要はないよ、だからそんな泣きそうな顔をしないでくれ」
「…でも、私なかなか言えなくて」
「私に気を使ってくれたんだろう?気にするんじゃないかって。分かっているよ、大丈夫」
思わず鼻の奥にツンと刺さるような感覚がして、私はそれを堪えるために唇を噛み締める。傑先輩の優しさに泣きたくなった。どうしようもない自分が嫌になるほど。
「だけど…」
「私が逆の立場でもなかなか言い出せなかったと思う。それに私も、知っていながら知らないフリをした。エナから伝えてくれるのを待っていたんだ。結構ズルいだろう?だからお互い様だよ」
「それに結局伝えてくれたじゃないか、私にとってはそれが全てだよ」と優しい声で話すと、私の頭をよしよしとそっと撫でてくれる。
この人は一体どこまで私を甘やかすつもりなのだろう。
結局はこんな形で言えていなかったことを簡単に許してもらって、それで良いんだろうか。私達は付き合っているのに、傑先輩にばかり迷惑をかけて私ばかりが甘えていて…
傑先輩を見上げれば、やはり優しい笑顔でこちらを見つめている。
けれど、本当にそうなのだろうか。私が傑先輩へと話して本当にそれで全てなのだろうか。傑先輩の気持ちは…これで良かったのだろうか。
「………」
いや、ダメじゃないか…ダメだよ。ダメだろう。だって傑先輩は隠すのが上手い。自分の気持ちを隠して無かったことにするのがとても上手い。
それは呪霊玉の一件でそんな傑先輩の姿を知ったはずだ。
傑先輩が一人で抱え込んでしまう人だということは。それなのに私は…