第22章 分からない
やましい気持ちがあって隠していた訳では無い。だけれどそんなことどう伝えたら良いのかも、ましてや色々なことを言えばそれこそ今まで言えてなかったことに対して言い訳にしか聞こえないような気がして。
やけに鼓動が早くなる。手に汗すら滲んできて…緊張で微かに声が震えた。
隠したかった訳ではもちろん無い。けれどなかなか言い出せなかったのも事実だ。何処かで私の心のモヤのような物がつっかえて、そして馬鹿みたいに言うのを躊躇った。
「知っていたよ」
「え…」
だけれど私の耳に届いたのは、予想していた傑先輩とはかけ離れていたもので、思わず唖然とする。
「うちの担任から聞いたんだ。悟が君に修行を付けることになったから、悟が忙しい時は代わりに面倒を見てやってくれって」
「そうだったの…?」
そうだ。私が言わなくとも、五条先輩が伝える可能性だってあった。それがまさか夜蛾先生からとは思っていなかったが。だからこそ早く言わなくてはとも思っていたはずなのに、まさか傑先輩が初めから知っていたなど思うはずがない。
それならばなおさら…
「言うのが遅くなってごめんなさい」
酷く情けない声が響く。
傑先輩に嫌な思いをさせてしまうかもしれないと分かっていて、なかなか言い出せていなかったのだから。