第22章 分からない
「…傑先輩…我慢してない?」
「え?」
「それが本当の…気持ち…?それで全部?」
「どうしたんだい?いきなり」
「なかなか言えなかった私が言うのも変だけど…本当は嫌だったんじゃないかって…傑先輩に我慢して欲しいわけじゃないの。少しでも嫌だって思ったなら言って欲しいなって思って」
傑先輩はいつも私の些細な変化にも気が付いてくれるのに、傑先輩の気持ちの変化に気付いてあげられない人でいたくない。
先輩はいつだって、私の気持ちに寄り添ってくれているのに。
もし本当に気にしていないならそれで良い。でも、もしそうでないのなら…私はちゃんとその傑先輩の気持ちを知っておかなくてはいけない。
だってそれが恋人という存在だとそう思うから。いくら恋愛に疎くても、そこはちゃんと分かってあげられる恋人でいたい。
見上げた先の先輩は、私を見下ろし少しばかり目を見開いた。私が傑先輩へとぎゅっと抱きついたからだ。
「傑先輩…私、付き合うって初めてだからよく分からないけど…でも先輩と一緒に毎日笑い合えたらなって思う…だから…」
途切れたように話す私の背に先輩の腕がそっと触れ、そして優しく掬い上げるようにして身体を優しく包み込む。
「じゃあ…少しだけ、情け無いことを言っても良いかい?」
こちらを見つめる傑先輩は、少し困ったように眉を垂れ下げると小さく微笑みながらそう呟いた。