第22章 分からない
「あー、腹減った」
「うん、お腹すいた。今日はカツ丼だって」
体術の修行を終えて、そろそろ夕食の時間だろうと二人で食堂へと向かう。もう全身ズタボロだが動いた分腹は減る。
腕の筋肉を揉み解しながら五条先輩と横並びで廊下を歩いていると「おっ」と隣からそんな声が降ってきて
私はそれに反応するようにして五条先輩を見たあと、真っ直ぐに見つめているその先輩の視線の先を追いかける。
「傑ー、今帰り?」
「あぁ、予定より早く終わってね」
「俺ら飯行くところだけどお前も行く?」
「そうだね、そうしようかな」
前から歩いて来た任務帰りの学ラン姿の傑先輩はそう言い五条先輩を見たあと、その隣にいる私を見下ろしにっこりと微笑んだ。
「少し、久しぶりだね」
どうしよう、傑先輩にまだ話せていないのに…五条先輩と一緒にいる所を見て先輩はどう思っただろうか。思わずドドドと心臓が変な音を上げる。
「あ…そうですね。任務お疲れ様です、夏油先輩」
「ありがとう」
だけれどこちらを見下ろしてくる傑先輩はどこからどう見ても普通で、何かを気にする様子はない。
むしろ五条先輩と何やら楽しそうに話しながら早々と食堂へと歩いて行く。
私と五条先輩は普段体術をする時に着ているジャージを着用していて、二人一緒に特訓をしていたことは見て分かったはずだ。特に勘の鋭い傑先輩ならば尚更。
…それとも、何も気が付かなかったのだろうか。