第22章 分からない
五条先輩は本当に私に体術の修行を付けてくれていた。明日からやるぞと言われた日から二日に一回はやっているだろう。今日でもう四回目だ。
正直途中で面倒になったとか言われて即終了なんて期待をしていたのだがそんなこともなく、わざわざ時間が出来ると五条先輩の方から連絡をして来てくれる始末だ。
連日の修行で身体はボロボロ。五条先輩と二人きりという空間に私の心もどうにかなってしまいそうで…
だけれどそれよりも何よりも一つ大きな問題がある。私はまだ…傑先輩にこの事を言えずにいた。
どう切り出したら良いのか分からないとか、そんな情け無いことを考えていたのはもちろんだが、そもそも傑先輩が忙しすぎてここ一週間まともに会えていないのだ。
会えたとしても本当に一瞬で、朝食堂で顔を合わせるとか、任務へと出掛けて行く姿を遠くの方から見かけたくらい。
だけれどメールのやり取りは毎日していて、何度メールで伝えようか…いっそのこと電話してしまおうかと考えては行動に起こせずにいる。
それは多分、五条先輩といる自分の感情の中にまだ五条先輩を忘れられていないというソレを馬鹿みたいに理解してしまったからだと思う。そんな自分を傑先輩にこれ以上知られたく無い。
ありのままを受け入れてくれた傑先輩に、私がそんな事を思う資格など無いはずなのに、今この現状を先輩に言えていないのが苦しいくて、そしてズルい自分を知られたく無くて。私は結局何も言えていないのだ。
酷くてズルくて卑怯な人間だと、自身をそう思う。
そんなこと、望んでなどいないはずなのに。