第21章 眩しい
「あとでまた、連絡するね」
寂しそうな傑先輩を見て、そんなことを口走ってしまうくらいには、傑先輩と恋人になったということに私自身浮かれているのかもしれない。
それにしても、夏油傑という人物は己の面の良さと声の良さを恐ろしいほどに理解している。
だって寂しそうにする仕草も、嬉しそうに綻ばす笑顔も全てが完璧なのだ。その表情が、その仕草一つ一つが傑先輩がモテるのだと良くわかる。思わず魅入ってしまう。
「本当かい?待ってるね」
ほら、今だってそうだ。
軽く首を傾け優しげに細める瞳がたまらなく色っぽい。そしてその優しく心地の良い声も、私の心の柔い所を全て攫っていく。
やっぱり今日も部屋の入り口まで見送ってくれた傑先輩は、ひらひらと手を振り私が廊下の曲がり角を曲がってからドアを閉めたのか、しばらく歩いた先、遠くの方でバタンと扉が閉まる音が聞こえた。
傑先輩とずっと繋いでいた手を見つめる。何時間も繋いだままだったからだろうか、何だかやけに名残惜しい。
そんなことを考えながら古びた寮の廊下を歩いた。