第21章 眩しい
ボーッとしているのだろう。瞳の色はどこか曖昧で、薄く瞼を開いたまま動かない。
「おはよう、傑先輩」
ゆっくりとした声色のままそう声をかければ、ワンテンポ遅れて一度瞬きをしたあと、その瞳が大きく開かれた。
「お、はよう」
少しだけ枯れた声。私が腕の中にいることを思い出したのだろう。ぎゅっと抱きしめていた身体の力を微かに緩めるとこちらを見つめ、そして先ほどまでの寝ぼけた表情はどこに行ったのかとと思うほどうっとりとした笑顔でこちらを見つめてくる。
まるで春に咲く花のようだ。
男性に対しこんな感情を持つ事はおかしいのかもしれないが、今はその言葉しか頭に浮かんでこない。
眉を垂れ下げ頬は軽くピンク色に染まっている。ゆるりと弧を描く瞳はそれはそれは優し気だ。
うん、やっぱり。花が咲いたみたいに美しい笑顔だなぁ。
「…ばいな」
「え?」
「ヤバイな、嬉しすぎてニヤける」
「へ?」
「エナが恋人として私の腕の中にいて、朝目覚めるなんて幸せすぎるだろ…」
まるで自分に言い聞かせているようなその言葉使いに、思わずぷっと笑ってしまった。