第21章 眩しい
ふわふわとした感覚の中、落ち着く香りと温かなモノに包まれ目を覚ました。
「…ん」
ゆっくりと瞼を開けば、そこは少し前まで見慣れていた景色が広がっている。
身体は動かさずそっと視線だけを目の前へと移せば、スースーと気持ち良さそうに寝息を立てている傑先輩の姿が目に入って、思わず小さな笑みをこぼした。
私と傑先輩は昨日、恋人になった。
私の、初めての彼氏。
そう思うと、何故だかやけに気恥ずかしくて顔が火照って行くのが分かる。だって、私達は恋人になったのだ。
端正で整った顔立ち、そしてガッチリとして良く鍛えられた先輩の逞しい腕が私を抱きしめている。
少しだけ乱れた黒く艶のある髪。それを指に絡めとるようにして後ろへと流せば、傑先輩の眉間がピクリと小さく動いた。
普段はしっかりとして寝起きも良さそうなのに、本当傑先輩は朝が苦手だな。そしてそんなところを私は可愛いと思っている。
普段見せないそんな抜けた姿を、自分はこうして見ることが出来ているのだと思うと、それがたまらなく嬉しくもあるからだ。
「傑先輩、朝だよ」
できもの一つ無い綺麗な頬をツンツンとつつきながら名前を呼べば、硬く瞑られていた瞳がうっすらと開いた。