第20章 厄介ごと
傑先輩が布団をめくると、横になった私へふわりとかけてくれる。
以前ならばこうして一緒に寝ることなど、いつの間にか当たり前になっていたはずなのに。今は緊張して喉から心臓が出てしまいそうだ。
それは多分…私が傑先輩の気持ちを知ったからなのかもしれない。
私の横へと寝転んだ傑先輩が、髪をまとめていたゴムを外して綺麗な漆黒の髪がはらはらと落ちていく。
「電気消すよ」
「うん」
パチっという音を上げ電気が消されると、月明かりが部屋に差し込んでいるのが分かる。しばらくは暗闇で目が霞んでいたが、少ししたころにはそれも馴染んできて、横へと寝転ぶ傑先輩へそっと視線を移す。
すると、どうやら傑先輩もこちらを見つめていたらしくパッチリと目が合ってしまって、思わず体を揺らせば「ふっ」と穏やかな笑い声が聞こえて来た。
「緊張しているのかい?」
「え、いや…その」
「以前はそんな素振り少しも見せなかったのにね。私としては嬉しいかな」
「…だって、傑先輩がいつも色々言葉にしてくれるから…」
「私の気持ちがちゃんと伝わっているようで嬉しいよ」
「…伝わってます…もの凄く」
「ふふ、それは良かった。そういえば手を繋いで寝るには夜中外れてしまう可能性があるね。紐で縛るかい?まぁ後は…エナが嫌で無ければ以前みたいに抱きしめて眠るのが良いかと思うんだけれど」