第20章 厄介ごと
まるで胸が何か溢れるもので押し出されるような感覚に、ゴクリと唾を飲み込んだ。
本当にこの人は…
傑先輩のストレートな言葉には未だに慣れない。いや、慣れろと言う方が無理なのだが…誰かからこんなにも想われ、そして好きだと表現されたことのない私には眩しいばかりの感情だ。
そもそも、誰かに好きだと告白されたこと自体初めてだというのに、その相手がこんなにもイケメンで優しくて完璧な人だなんて、胸が音を上げないわけが無かった。
「はい、どうぞ」
「お邪魔します」
久方ぶりの傑先輩の部屋に入れば、少しの間来ていなかっただけなのにも関わらず何故だかとても久しぶりに感じる。
落ち着く香り、綺麗に整えられた部屋。
「着替えるから少しだけ手を離すよ」
「あ、うん!」
傑先輩の言葉に慌てて後ろを向けば、一分もしないうちに着替えを終えたのか再び私の手が傑先輩によって握られる。呼吸が荒くなるすきもないほどの早業だ。
スルリと繋がれた手に再び熱が篭って、それがとても心地良いとすら思う。