第20章 厄介ごと
「いや、何と言うか…私の方こそすまない」
そう言った傑先輩は、私と手を繋いでいるのとは反対の手で口元を押さえながら視線を軽く外した。そして私にしか聞こえないほどの小さな声で呟く。
「私とずっと手を繋いでいるの…嫌じゃないかい…?その…私は君が好きだから」
傑先輩の耳がうっすらと染まっているのが分かる。その瞬間、自分の顔までもじわじわと赤く熱を帯びた。だってこんなことをこんな表情で言われて…平気なわけがない。
「嫌なわけないですっ、むしろ…先輩を巻き込んだのはこっちで…」
二人顔を染めながらボソボソと話しているものだから、少し離れたところでこちらを見つめている七ちゃんと雄ちゃんは不思議そうにしている。それもそうだろう、モテ男の傑先輩が手繋ぎ程度で赤面くるなど誰が思うか。
「じゃあお互いに問題なしってことで、夏油頼んだよー。しばらく二人の任務は他に回してもらうから」
どうやら近くにいた硝子先輩には私達の会話が聞こえていたらしく、その表情はニヤニヤと何処か楽しそうだ。
「ほら、七海灰原行くよ。邪魔しちゃ悪いしねー主に夏油に」
「邪魔?あ、じゃあエナちゃん俺達先生に報告してくるから!しばらくは不便だと思うけど夏油先輩とゆっくりしててね!」
「夏油先輩、彼女のことよろしくお願いします」
「あぁ」
「七ちゃん雄ちゃん迷惑かけてごめんね!!」
「気にしないで!たまの休みだと思って!」
「何かあったら連絡して下さい」
「うん、ありがとう!」