第19章 可愛いひと
「調子の良いことを。それより傑はこの後任務じゃないのか?」
「そろそろ行こうと思っていたところです」
「そうか、頼んだぞ」
「はい、一瞬で祓って来ますよ」
傑先輩が頷く顔を見た夜蛾先生は、そのまま教室を出ていくと廊下の先へと消えていった。
「それじゃあ私も行こうかな」
「うん、気を付けて!」
「ありがとう」
立ち上がり雄ちゃんの席へと椅子を戻した傑先輩を眺めながら、そういえばとポケットに入れていた物を思い出す。
「傑先輩、これ」
「うん?」
「この前買った凄く美味しいレモンの飴、お裾分け」
私はポケットに入れていたレモン柄の小さな袋に入った飴玉を取り出すと、傑先輩の前へと差し出した。
「いつもありがとう、美味しそうだね」
「口の中がさっぱりして美味しいよ」
傑先輩は左ポケットから見慣れた柴犬柄の小さな巾着袋を取り出すと、飴玉を巾着の中へとコロコロと入れた。
私が先輩の誕生日にあげた巾着袋。いまでもちゃんとこうして毎日持ち歩いてくれていて、呪霊を取り込んだ後はお口直しで毎日ここから飴玉やガムを取り出していると言っていた。だから私もこうしてオススメのお菓子がある時は傑先輩の巾着へとお裾分けをしている。