第19章 可愛いひと
昼下がりの高専に人気はほとんどない。何故なら呪術師は万年人手不足で、いつだって忙しなく現場を走り回っているからだ。
補助監督もしかり。常に呪術界は人員が足りていない状況で、ブラックもブラック。いや、激ブラック企業だ。
だから座学の授業を終えて任務へと駆り出されて雄ちゃんと七ちゃんを見送ったあと、今日任務のない私は暇を持て余しながらそこらを歩いていたわけなのだが、目の前にいる最近のこの時間帯の高専には珍しい人物を見つけ思わず笑顔で駆け寄った。
「傑先輩!」
私よりも少し先の廊下を歩いている見慣れた後ろ姿。私はその背へと大きな声を出して側までいけば、こちらを振り返った傑先輩は私の顔を見て嬉しそうに笑顔を見せた。
「お疲れ様、一人かい?」
「お疲れ様です!今日私だけ任務入ってなくて。簡単な任務だから二人で十分みたいで私は座学の課題消化」
「それは大変そうだね。もし分からないところがあったら教えるよ」
「でも傑先輩任務は?この時間に高専いるの珍しいよね?」
「この後一件あるんだ。だけれど少し時間が出来たからね、会えないかなと思って丁度探していた所だったんだ」
「何を?」
「もちろんエナを、だよ」
ゆるりと目尻を下げたながら、ストレートに言葉を放つ傑先輩は照れる素振りすら見せずそんなことをサラリと言ってのける。
もちろん私はそのどストレートな言葉に赤面せずにはいられなくて「あ、そっか…」とポツリと呟くので精一杯だ。