第19章 可愛いひと
「ちょっと紹介は…」
そう言葉をつまらせるようにして呟けば…ニコニコとしていた女性達の視線が一気にキツい物へと変わった。
「えー何でダメなの?あ、もしかしてあれ?自分一人が彼らを独り占めしたい〜とかって話し?」
「え…」
何でそうなるの…?
「そうだよね、そうじゃなきゃあんな男数人の中に一人で女子がいるわけないもんね」
いや…男子数人の中に女子が一人なのは高専の生徒が少ないからで…女子が私と硝子先輩しかいないからなのに。そもそもここにいるメンバーが在校生の半分ですなんて言っても信じてはもらえないだろう。
「何?だんまり?図星だったってこと?」
「…っちが!」
「ビッチじゃん!!」
あまりに悪意ある言葉に、思わず身体をビクリと揺らす。ビッチ…なるほど、ビッチ…確かにそうなのかもしれない。五条先輩とセフレなんてしていた時点で私はビッチで…そしてそれすら否定出来ないような人間なのかも…何も間違ったことではないのかもしれない。
出そうとしていた言葉を飲み込み、思わずうつむいてしまいそうになった時だった。
グッと背後に傾いた身体。何かによって強く引き寄せられる。
「うちのに何か用?」
頭上から降って来た声、冷めた様な、そして怒りを含んだ声だ。
「こいつ単純なんだから余計なこと吹き込むなよ。うぜぇな」
「……ごじょう…せんぱ」
そこにいたのは片手をポケットに突っ込み、反対の手を私の腹部へとぐるりと回しこちらへと引き寄せてくる人物。
酷く苛立ったような顔をした、五条先輩が立っていた。