第19章 可愛いひと
後を付けられていることは分かっていた。私だって呪術師だ。一般人の気配に気が付かないはずがない。
だけれど気が付かないふりをした。だって、今から起きるであろうことは確認などしなくても分かる。
そしてそれが初めてでないことも。
「あのーすみませーん」
トイレを出た私を待っていたかのように、甲高い声がかけられる。私は思わず吐きたくなるため息をグっと堪えてゆっくりと振り返った。
「はい」
振り返った先には女性二人組の姿。大学生だろうか、綺麗に巻かれた髪、崩れることやを知らないメイク、可愛らしい服装。一人は綺麗系の女性、もう一人は可愛らしい女性だ。
真っ黒でまるでカラスの様な高専の制服を着た私とは大違いな人達。
「さっき、イケメン君達と一緒にいた子だよね?」
こちらが年下だからだろうか、グッと距離が近くなる様な言葉遣いに思わず苦笑いを溢す。
「あ、はい…多分そうだと思います」
イケメン君達だけでは、彼らの事なのかは分からないが間違いなく私の周りにはイケメンが勢揃いしている。だけれどもしかしたら違う人達かもしれない…なんて少しは思えて、曖昧な言葉を返した。でも、間違いなくあの場所で一番目立っていたのは私のいたテーブルだろう。