第19章 可愛いひと
それならば私はそれに応えないとならない。何でもないふりをして…何事も無かったかのようにする必要がある。
だってきっとそれが最善だから。例え五条先輩の側に今までのようにはいられなかったとしても。こうして無視されることもなく後輩として仲良くしてくれてくれるのであれば、これほど幸せなことはないのかもしれない。
うん、それが良い。何でもないふりをして、何も無かったみたいな態度で、そしてそのままそれが当たり前になって当然になって五条先輩への恋心も消えて無くなればいい。
そうすればこの苦しさからも辛さからも解放される。きっと、ごく普通でありふれた私に戻れる。五条悟を好きになる前の私に。
以前ならこんなこと、考えもしなかっただろう。だけれど今そう思えるということは、きっと私の限界はとうに越えたいたのかもしれない。こんなことを考えてしまうほどには…
「悟、人の物を勝手に取ってはいけないよ。常識だろう」
「後輩のものは俺のもの」
「君はジャイアンか。特に女の子に対してそんなことをするものじゃない」
「はいはい、傑ママ」
「誰がママだって?」
傑先輩は私の気持ちを理解するのが上手いと思う。だから今もこうして、五条先輩へと注意をしてくれているのだろう。
「五条さん!俺の麦茶ありますよ!飲みますか?」
「麦茶って気分ではねぇな。ココアなら飲む」
「灰原の優しさに対して良くそんなことが言えますね」
「じゃあ七海買って来て」
「人の話聞いてました?そもそも嫌です。ご自分で行って下さい」
「あ、俺行ってきますよ!」
「灰原、行く必要はないよ。悟が自分で行けば良い。行って来な、悟」