第18章 当たり前
「返事は焦らなくて大丈夫だから、少し考えてみて欲しい。こんな時に悩ませるようなことを言ってすまない」
そう言った傑先輩は、私を見下ろしていた瞳を細めるとふんわりと微笑んだ。
「…でも、私は…」
私は未だ五条先輩を好きなままだ。そんな簡単に消え去るような気持ちではないし、そんな状態のまま傑先輩と付き合うなんて出来るはずがない。
私が言おうとしていたことが分かったのか、傑先輩はゆるりと口の端を持ち上げると私をそっと覗き込む。
「言ったろ、君が悟を好きなことは承知の上だよ。そのままでいい、ありのままの君でいいから。悟を好きなままの君を受け入れるから、だから考えてみて欲しい」
「…そんなこと…」
「答えがなかなか出なくても焦らせたりはしないよ。気長に待つ覚悟はあるからね。だけれどこれからは覚悟して、ストレートに好きだと伝えていくつもりだ」
傑先輩はコテンと首を傾けると、先ほど引っ込めたその大きな手を伸ばし私の頭をポンポンと撫でた。
その色っぽい表情はまさに甘美的で、私の胸がドクンと音を上げる。顔中に熱が篭りのぼせてしまいそうだ。
こんなにもかっこよくて色っぽい人に、今後はストレートに好きだと伝えるからなどと宣言をされて平常心でいられるわけがない。
一体今後私をどうしようというのだ。こんなにも甘い表情で見つめられて…私はどうしたら良いの。