第18章 当たり前
まるで何かが吹っ切れたように爽やかな笑みを見せる傑先輩。
そんな傑先輩の顔を見れば、先ほどまで痛んでいたはずの自身の胸のモヤさえも少しずつ消えていくようだ。
…不思議だ。この人はいつもこうして私の苦しさを簡単に取り去ってしまうのだから。
「目、ちゃんと冷やすんだよ」
「…はい」
「敬語にまた戻っちゃったのかい?二人の時は今まで通りにしてくれると嬉しいな」
告白されて以来、緊張からか思わず敬語に戻ってしまっていた口調。傑先輩にそう言われてしまったら元に戻さないわけにはいかない。
「うん、分かった」
「それじゃあ私はこれから任務だから、そろそろ行くよ」
「うん、気を付けて行ってきて…ね」
もう一度私の頭をぽんぽんと二度ほど撫でた傑先輩は「行ってきます」と優しい笑みをみせると、こちらへと背を向けて夕暮れに染まる廊下を歩き出した。
その広く大きな背中を見て思う。
傑先輩の気持ちを聞いて、荒れていた私の心は落ち着きを取り戻した。それってきっと、傑先輩の気持ちを聞いて少なからず嬉しいと思っている自分がいるということだ。
そう思えば余計に今後どうしたら良いのか分からなくて…ただ私を真っ直ぐに見つめてくれる傑先輩の気持ちを、私は真剣に受け止め考えなくてはいけないと、心の底からそう思った。