第18章 当たり前
その瞬間は、あまりに突然に訪れた。
三年生が帰って来て数日。私達も先輩達も忙しいということもあり、帰って来たという噂は聞いていたが直接会うことは無かった。
私自身なるべく合わないようにと、先輩達がいそうな場所を避けていたのもある。
それでも三年生が帰って来てから数日は会うことはなくて、先輩達が京都へとヘルプに行っていたのを計算したら恐らく二週間は会っていなかったように思う。
任務を終えとにかく身体がどこもかしこもヘトヘトで、食べ損ねた昼食と夕食のせいでお腹はぺこぺこ。とりあえず炭酸でも買って胃をスッキリさせようなどという幼稚な発想から自販機へと向かった所までは良かった。問題はその自販機の目の前にいた人物だ。
だけれど疲れからかとぼとぼと俯き加減で歩いていた私は、その目の前の人物に気がつくとのが遅れてしまい…
「…………」
気が付いた時にはその場から逃げることすら許されない距離に足を踏み出していた。
「………お疲れ様です」
バクバクと馬鹿みたいに心臓がうるさく鳴る。やっとの思いで絞り出した声は信じられないほどに震えていて…そしてそんな当たり障りもない言葉を言うので精一杯だ。今さらユウターンをしてスルーするなど無理な話ではあるし、誤魔化しようもない。
自販機の目の前にはペットボトル片手に携帯をいじっている五条先輩の姿。二週間ぶりに見る五条先輩。
あの日以来…初めて会う五条先輩だ。