第18章 当たり前
食器を流す音を耳の遠くの方で聞きながら、思わず言葉を詰まらせる。どう答えたら良いんだろうか。真実など到底話せる訳がない。いくら信用している七ちゃんであっても…きっとこんなことを聞かされたら困惑するはずだ。
そんな私の考えを察してか、七ちゃんは少しの間を開けたあと優しい声を落とした。
「話しづらければ無理に話す必要はありません」
「…ごめん」
「ただ、私と灰原がいることを忘れずに。私達二人はあなたの味方です」
まるで心が一気に浮上していくかのような感覚がした。その優しさに胸が救われスッと軽くなる。
「七ちゃん、ありがとう。本当に…ありがとう」
今の彼の言葉がどれほど私に勇気を与えてくれたのか、きっと七ちゃんには分からないだろう。どこまでも優しくて頼りになる仲間、大切な友。かけがえのない存在。
「ほら、部屋に戻りますよ。灰原を起こして部屋に連れて行かないといけませんから」
「うん、そうだね!行こう、七ちゃん!」
きっとあと数日もすれば三年生が帰って来る。
あの二人に会った時、一体私の感情はどう動くのだろうか。それはまだ分かりそうにはないけれど…だけれど今夜は穏やかに眠れそうだ。七ちゃんと雄ちゃんの優しさが私を包み込んでくれたから。