第17章 それは突然に
呪いは呪いでしかないはずなのに、何故だかそこへ悲しみや虚しさを時折感じてしまう。
これは術師としてはあってはならない感情だ。それなのにも関わらず、呪いを見るたび何故この呪いが生まれてしまったのかと少なからず考えてしまう私は、本当は呪術師に向いていないのかもしれない。
子虎の隣へと腰をかけながら、その小さな背中を撫でる。
ふわふわとした毛並みはまるで本物の動物そのもので、思わずその柔らかさに笑みを作った。
傑先輩の手持ち呪霊だからもちろん害は無い。何かをして来ることも、ましてや私を襲うなんてことは絶対にないはずだ。何よりも、この子からは呪い特有の禍々しいオーラを感じ難い。
子虎は私が撫でる手つきに目を細めながらベッドへと寝転ぶと、そのままスッと瞳を閉じた。
子虎の寝顔を見ながらも、私の心の中は未だ複雑な心境のままだ。
まず浮かんでくるのは五条先輩の顔だった。
どうでも良さそうに、酷く私から興味を無くしたようなあの表情を思い出すだけで、胸がエグられるように痛い。
痛くて痛くて苦しくて、そして胸の奥底が張り裂けたみたいな感覚。
五条先輩の声が
表情が
体温が
今まで触れてきた彼の全てを思い出しては、まるでそれが夢だったかのように消えて無くなる。