第17章 それは突然に
傑先輩は言った。私が好きだからこれ以上のことは出来ないと。その意味がやっと分かった気がする。
傑先輩の優しさは麻薬だと思っていた。
でもそれは違った。
麻薬などでは無かった。
傑先輩は私が五条先輩を好きだと知っていてもなお、私を好いて優しくしてくれていたのだ。
どうしようもなくボロボロになった私を。ただ涙を流すことでしか五条先輩を想うことの出来ない私を…
傑先輩はずっとその優しさで包み込み、そして支えてくれていたのだ。
麻薬なんかじゃなかった。馬鹿だ、私は馬鹿だ。傑先輩の優しさは紛れも無い私への優しさだったのに。
何か言わなきゃ…でも何を?何を言えば良いの…?どうしたらいい?こんな状態になっていたとしても…結局私は五条先輩が好きなのに、何を傑先輩に言えばいい?
分からない。
目の前で困ったように眉を垂れ下げている傑先輩に、私がかけられる言葉は何なのだろうか。
何が正解で、何をどう伝えれば良いのだろうか。
しばらくの長い沈黙が続いた時だった、まるでそれが偶然には良すぎるほどのタイミングで大きな着信音が部屋中に響き渡る。
そしてそれに反応した傑先輩は、ポケットから携帯を取り出し画面を確認すると小さな溜息を吐き出してゆっくりと立ち上がった。