第17章 それは突然に
呆然とした状態のままベッドから起き上がれば、ベッドの前で佇んでいた傑先輩がこちらを見下ろしていることに気がついた。
そのワイシャツは肌けていて綺麗な筋肉が顔を覗いている…それを見れば先ほど自分が何をしてしまったのか嫌でも分かる。
「先輩…ごめんなさい…こんなことして」
絞り出すように小さな声で呟けば、こちらを切な気に見下ろしていた傑先輩がベッドへと座る私の前へとしゃがみ込んだ。
「いや、それは私の台詞だよ。ごめん」
「…先輩が謝ることじゃないです…私が全部…」
「それに、こんな時に言うことじゃ無かった」
こんな時に言うことじゃなかった。一体それが何を指しているかなど、聞き返さなくても分かる。だけれどそれが…どういうことなのかは未だ少しも理解は出来ていない。
だけれどどう聞いたら良いのかも、ましてや自分から「私のことが好きって本当ですか?」なんて聞けるはずもなく、ただどうしたら良いのかも分からぬ心情のまま先輩を見つめれば、傑先輩は困ったように眉を垂れ下げそして私を見上げた。
「今まで嘘を付いていてごめん。私はずっと君が好きだったんだ。君が悟を好きになるよりもずっと前から」
「……ずっと…前から…?」
「君が悟を好きなことは分かっていた、それでも君の側にいたくて他に好きな人がいるなんて嘘を付いた。お互いを利用しようだなんて都合の良い言い訳までして…ただ君のそばにいたかったんだ」
そう…だったの…
「幻滅したかな。いや…どちらにしても呆れたよね。君を騙していたことには変わりない。それにこんな時に好きだと伝えて、困らせることは分かりきっていたのに。でも誤解してほしく無かったんだ。君にこれ以上触れられない理由を」