第17章 それは突然に
最低だってことは分かっている。それでもなお…逃げたかった。
傑先輩の優しさにつけ込んで、そして逃げてしまいたかった。
不思議と涙は出ないとそう思っていたのに…それなのにも関わらず私の瞳からは涙が止まることなく溢れ出ていた。
何故…だろうか。傑先輩の熱に触れ涙腺が緩んだのかもしれない。
私の上に覆いかぶさっていた先輩が私の乱れた服を直し、そしてベッドからそっと降りる。
良く分からなかった…
傑先輩が私の事を好き?何で…だって傑先輩は私が五条先輩のこを好きなのを知っていて…いや、さっき先輩はずっと好きだったって言っていた。
それって私と傑先輩が一緒の布団で眠るようになったよりもずっと前からってこと…?
でも傑先輩には好きな人がいて、私とはお互い寂しさを埋めあえる相手として利用しようって話で…
そこまで考えて上体を起こしかけていた動きをピタリと止めた。
そうだよ、そもそも傑先輩には好きな人がいるって知っていたはずなのに…私は傑先輩に無理矢理キスをした…最低だ…
傑先輩の優しさにつけ込んで、傑先輩なら私を受け止めてくれるだろうなんてそんな浅はかなことを考えた。
本当に…最低最悪でしか無い。