第17章 それは突然に
それ以上傑先輩が何かを言って来ることはなかった。
それと同時に、先輩は交わされる口付けを拒否するんでもなく私が取る動き一つ一つを丁寧に受け入れた。
「……っん」
私が舌を絡めればそれに応えてくれたし、息を大きく吸い込もうとすれば啄む様なキスを与えながら髪を撫でてくれた。
それだけで刺すような苦痛から少し解放されたような気がする。だけれど…それも一瞬で、再び私の脳裏を掠めたのは先ほどの五条先輩の姿と“終わり”と言う言葉だった。
どうか夢であって欲しいと願った。
あれは私の最低最悪な妄想で、現実なのではないのだと。
でも…それはどう願ったって無理な話しで…
「…はぁ…ふぅ」
こうして傑先輩と口付けを交わしていること自体が、先ほどまでの全てが現実なのだと物語っていた。
傑先輩の首へと両腕を回す。グッとなるべく身体が近づくようにすればその熱でいくらか苦痛が和らいだような気がした。
私が首元へ力を込めたことにより、傑先輩の身体が揺れそのままの反動で私の背中がぽすっとベッドへと倒れる。
くちゅくちゅと唇を重ね合い無我夢中でそれだけに集中するようにして必死で舌先を伸ばせば、ただそれだけで心が救われる思いだった。
キスを交わしながら傑先輩の学ランのボタンを外して行く。そしてそれがスルリと床へと落ちたのを合図にワイシャツのボタンへと手を伸ばした。