第17章 それは突然に
グッと腕に力がこもる。まるで先ほどまでの脱力感なんか嘘みたいに。
ふわりと傑先輩から爽やかな香りがしてきた。ベッドの中でただ抱き合いながら何度も嗅いだ傑先輩の香りだ。
麻薬だ。これは麻薬だ。
儚く脆い私の心にとって…
傑先輩の優しさは麻薬だったのだ。そうだ、そうに違いない…だって…そうじゃなきゃ…
私の隣へと座っていた傑先輩の首元の学ランを掴んだ。そして躊躇うことなくそれを引き寄せると、私はその冷えきった唇を傑先輩の唇へと重ねた。
私の冷えたソレとは違い、傑先輩の温かな唇。
薄らと開けた瞳の先で先輩は大きく目を見開いている。それはそうだ。そうならない方が可笑しい。
それでも私はその唇を離すことなくそれどころか薄らと口を開くと、唖然としていた傑先輩の力無い唇の隙間をそっと開くようにして口内へと舌を差し込んだ。
「……っ」
くちゅりと甘い音が上がる、そこでやっと我に帰ったのか、唖然としていた傑先輩の唇がピクリと動いた。
先輩の胸元の学ランを掴んでいた私の腕を傑先輩が掴む。それでも私は舌先の動きを止めることなく先輩の柔らかな舌を絡めとった。