第17章 それは突然に
声も出ない。
待ってと…行かないでと言うことも出来ない。
指先が冷えて感覚すら失われているようだった。
今、何が起きた…
今、私は何をしてる…
立っているのかも、座っているのかも、ましてや呼吸しているのかすら分からなかった。
それほどまでに暗闇に落ちたみたいな絶望の中にいて、そして感じたこともない喪失感と虚無感に囚われていた。
分からなかった。さっきまでいつも通りに任務をこなしてただ高専へと戻るはずだったのに。
何故こんなことになった…
何故こんな場所に私はいる…
そして、ここ最近私の中にあった疑問が一つ頭に浮ぶ。それはまるでパズルのピースが埋まって行くみたいに気がついた一つのあること。
そっか。ここ最近五条先輩に会えていなかったのは先輩が忙しかったからじゃない。忙しくて会う時間が無かったんじゃない。
あえて私を避けていた。私に会いたくなくて、この関係を断ち切りたくて…だから連絡も来なかったし高専内で会うこともなかったのか。
いや、違うか…もしかしたらもう既に二週間前にはとっくに五条先輩の興味は私から外れ、セフレですらなかったのかもしれない。